文章支援 TTS 朗讀
私わたしの心こころには、幼おさない頃ころの記憶きおくが鮮明せんめいに残のこっている。特とくに、昔住むかしすんでいた家いえの近ちかくにあった、細ほそい「路地裏ろじうら」だ。舗装ほそうされていない土つちの道みちには、雨あめの後あとには水みずたまりができ、そこに空そらの色いろが映うつっていたのを覚おぼえている。古ふるい木造もくぞうの家々いえいえが軒のきを連つらね、その間あいだから漏もれる生活せいかつの音おと、夕食ゆうしょくの匂においが、私わたしを包つつみ込こんだ。学校がっこうからの帰かえり道みち、友達ともだちと隠かくれんぼをしたり、秘密ひみつの場所ばしょを探さがしたり。特とくに何なにもなかったはずのその道みちは、私わたしにとっては無限むげんの想像力そうぞうりょくを掻かき立たてる舞台ぶたいだったのだ。
大人おとなになり、様々さまざまな場所ばしょを訪おとずれたが、あの路地裏ろじうらに感かんじたような安心感あんしんかんや、郷愁きょうしゅうにも似にた温あたたかさを感かんじることは少すくない。時ときが経たち、街まちの姿すがたは変かわっても、私わたしの心こころの中なかでは、あの路地裏ろじうらが今いまも鮮あざやかに生いき続つづけている。無なにげない風景ふうけいの中なかにこそ、人ひとの心こころを豊ゆたかにする本質ほんしつがあるのかもしれない。

理解測驗